【R8.4 ペガサス情報誌】♦インボイス「2割特例」終了後の新措置、「3割特例」が新設へ ♦免税事業者からの買い入れ、税額控除の経過措置が延長・見直しへ ♦最低賃金の「除外申請」制度、ご存じ」ですか? ♦社会保険料率・雇用保険料の料率変更 ♦労働者死傷病報告の対象者の範囲拡大に関する法改正
2026年04月01日
目次
Contents 1.
インボイス「2割特例」終了後の新措置、「3割特例」が新設へ
2026年度(令和8年度)税制改正大綱により、インボイス制度の負担軽減措置が見直されました。現行の「2割特例」終了後、個人事業主を対象に新たに「3割特例」が導入されます。ペガサス情報誌では2026年1月号にて今年度のポイントをお伝えしましたが今改正により1月号の内容の一部が変更となっていますことをご了承ください。
■改正のポイント:個人事業主向け「3割特例」の新設
インボイス登録により免税事業者から課税事業者となった個人事業者に対し、事務負担軽減のため、納税額を売上税額の3割とすることができる措置が2年間に限り講じられます。
- 対象期間: 2027年(令和9年)および2028年(令和10年)の各課税期間
- 内容: 売上税額の7割を控除(=3割を納税)
- 手続: 確定申告書にその旨を付記することで適用可能
◇実務上の注意点
- 対象者の限定: 本特例は個人事業主のみが対象であり、法人は適用されません。
- 売上規模: 基準期間の課税売上高により本来の課税事業者となる場合は適用外です。
- 法人の対応: 法人は2割特例終了後、速やかに簡易課税または本則課税への移行準備が必要です。
*2割・3割(個人事業者)特例適用後の簡易課税制度選択届出の期限が緩和
この特例の適用を受けた事業者が、その翌課税期間から「簡易課税制度」へ移行する場合、翌期間の確定申告期限までに届出書を提出すれば適用が認められるようになります。例えば、令和8年9月期に2割特例を適用した法人が、令和9年9月期から簡易課税制度を適用する場合は、届出書を「令和9年9月期に係る確定申告期限(令和9年11月30日まで)」に提出すればよいこととなります。
Contents 2.
免税事業者からの買い入れ、税額控除の経過措置が延長・見直しへ
インボイス登録のない免税事業者からの仕入れに係る「税額控除の経過措置」が、期間延長とともに段階的な縮減へと見直される方針となりました。
■改正のポイント:期間延長と控除率の段階的縮減
免税事業者からの課税仕入れについて、一定割合を控除できる経過措置の期限が2031年(令和13年)9月30日まで「2年延長」されます。一方で、控除可能な割合は現行の80%から段階的に引き下げられます。
*租税回避等の防止:適用上限額の引き下げ
特定の免税事業者からの仕入れ額に対する上限が厳格化されます。
- 改正内容: 同一の免税事業者からの仕入れ合計額が年間1億円(現行:10億円)を超える場合、その超える部分については経過措置の適用が認められません。 (村田)
Contents 3.
最低賃金の「除外申請」制度、ご存じですか?
最低賃金は、雇用形態を問わず原則すべての労働者に適用される「賃金の最低ライン」です。労使が合意していても、最低賃金を下回る部分の取り決めは無効となります。
ただし、最低賃金を一律に適用すると、採用や雇用の継続が難しくなる場合もあります。そのため、一定の要件を満たす場合に限り、個人ごとに最低賃金額を引き下げることを認める制度として、「最低賃金の減額の特例許可制度(いわゆる除外申請)」が設けられています。
▼制度の概要
最低賃金の減額の特例許可制度とは、一般の従業員と比べて著しく労働能力が低いなどの事情がある従業員について、都道府県労働局長の許可を受けることを前提に、その人に限り最低賃金を下回る賃金の支払いを認める制度です。
この制度は、最低賃金によって「一定水準の賃金を保障する」という考え方と、事情のある方の「雇用機会を確保する」という考え方のバランスを取ることを目的としています。
そのため、最低賃金の「抜け道」として使うものではなく、あくまで雇用を維持・確保するための限定的な例外制度として位置付けられています。
減額特例の対象となり得るのは、次のいずれかに該当する従業員です。
| 区分 | 概要(典型例) |
|---|---|
| 精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者 | 同一・類似業務の他の従業員と比べ、作業量やスピードが明らかに低い場合。 |
| 試用期間中の者 | 採否判断のための期間中にある者。期間は必要最小限で、通達上は最長6か月程度が目安。 |
| 基礎的技能・知識を習得する職業訓練を受ける者 | 認定職業訓練などで、訓練時間が所定労働時間の相当部分を占める場合。 |
| 軽易な業務に従事する者 | 片付け・清掃・単純な監視など、事業場の本来業務に比べ特に負担が軽い業務のみを行う場合。 |
| 断続的労働に従事する者 | 実作業時間より待機時間が長い夜間の監視業務など。 |
いずれも「該当しそうだから申請すれば必ず認められる」というものではなく、実際の業務内容や能率、業務負担などが厚生労働省通達に照らして妥当かどうかを労働局が個別に審査します。障害以外を理由とした減額特例の申請が許可されるケースは非常に稀なことです。
▼有効期限について
減額特例の許可は無期限ではなく、有効期限付きで与えられます。
許可書には、「誰に」「どの業務について」「いくらの賃金で」「いつからいつまで」適用するかが明示されます。この期間内に限って、最低賃金を下回る賃金支払いが認められます。期間満了後も引き続き減額を行う場合は、改めて許可を受ける必要があります。
有効期限を過ぎてなお最低賃金を下回る賃金を支払い続けた場合、その時点からは最低賃金法違反となり、差額の支払い義務や50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。
実務上は、人事・給与で「許可期間の終了日」を管理し、必要があれば満了前に見直し・再申請を検討しておくことが重要です。
おわりに:
今後、障害者の法定雇用率は、民間企業で現在の2.5%から2026年7月には2.7%へ引き上げられる予定です。あわせて、対象となる企業も「常用雇用労働者40人以上」から「37.5人以上」へと拡大されます。こうした動きを踏まえると、障害のある方の雇用を検討・拡大していく企業は今後さらに増えていくと考えられます。
その際には、まず最低賃金を守ることが原則であることを前提としつつ、一般の水準では雇用が難しい個別のケースについては、法令に基づき慎重に減額特例の活用を検討するという考え方が重要になります。
障害者雇用率の引き上げの流れも踏まえながら、あらためて自社の障害者雇用の方針と最低賃金への対応について整理・確認しておくことが大切ではないでしょうか。 (伊藤か)
Contents 4.
労働者死傷病報告の対象者の範囲拡大に関する法改正
現在、労働者が労働災害により死亡・休業した場合、休業等の給付の手続きの他に、労働災害防止対策の行政資料とするために死傷病報告書を監督署に提出することが義務となっています。
しかし近年、働き方改革や副業・兼業の普及、登録型派遣や日雇い労働者の増加など、雇用形態の多様化により、建設現場や物流現場などでは、個人事業者や一人親方、中小企業の役員等が労働者と同じ場所で作業するケースが増加しており、これらの者が労働災害に遭っても、報告義務がなく、災害実態の把握に漏れが生じていました。
この多様化した働き方に対応するため、2027年(令和9年)1月1日施行の労働安全衛生規則等の改正により、労働者死傷病報告の対象者が拡大されます。
① 対象者の拡大について
今回の改正で新たに報告義務の対象となるのは
- 個人事業者(いわゆる一人親方)
- 中小企業の役員等(取締役等で実際に現場作業に従事する者)
- 登録型派遣労働者
- 日雇い労働者
- 短期雇用(1か月未満)契約者
- 複数就業者(副業・兼業)
以上の方について労働者と同一場所での業務災害により死亡または4日以上休業した場合に、死傷病報告書の提出となります。
(※ただし、個人事業者や中小企業の役員等においては過重労働等を原因とする脳血管疾患、心臓疾患または精神障害を原因とする自殺による死亡、または休業に至った場合においては、時間管理が難しいこと等から報告の対象外です。)
労災保険給付の有無にかかわらず、該当する災害が発生した場合は必ず提出しなければなりません。
② 報告義務者について
個人事業者(労働者を使用しない者)の報告義務者は、特定注文者(個人事業者に仕事を発注し、かつ同じ場所で仕事を行う事業者)または、災害発生場所管理事業者(災害発生場所を管理する事業者)となっています。
③ 罰則規定については変更なし
報告義務違反(未報告・虚偽報告)は「労災隠し」として厳しく処罰されます。
- 労働安全衛生法第120条第5号:50万円以下の罰金
- 労働基準監督署による是正勧告・行政指導
- 悪質な場合は書類送検・刑事責任追及
これにより、従来は把握が難しかった災害事例も行政が把握できるようになり、より的確な再発防止策の立案が期待されています。
また、新たな報告義務の対象者においても療養・4日以上の休業・死亡の労災適用となるよう、労災保険の特別加入をご検討ください。
(山田真)
